当院では、院内に歯科用CT「オージェソリオ(AUGE SOLIO)」という機種を導入し、インプラントを安全に埋入するための画像撮影と診査・診断を行っております。
近年の日本の多くの歯科医院では、残念ながらCT撮影をしないで、歯科用レントゲンだけ
に頼ったの画像診断が大半を占めています。これは、外国から日本が「インプラント先進国」
言われない理由の一つとなっていると思います。
まじめにインプラント治療に取り組んでいる歯科医院では、画像診断にはCT撮影を行います。
CT撮影をせずに、歯科用レントゲンだけに頼った安易な診査・診断はインプラント専門医から
「ドキドキ一発勝負」と呼ばれています。
CTスキャンとインプラント手術シミュレーションソフトによる診断
全てのケースでCTが必要とは言い切れません。
CT撮影をしないで済む簡単なケースもあるでしょう。
しかし、簡単かどうかはCTを撮影しないと分かりません。
CT撮影をする事は、理想的な診査・診断ができるので
インプラントの手術の成功のためには不可欠です。
ここで、注意して欲しいことがあります。CTを撮影しても、そこから得られる情報はただの顎骨の断面像のみなのです。
インプラントにおけるCTについて大切な事は、
インプラント画像診断やインプラント手術シミュレーションをしっかり行っているかどうかなのです。
つまり、『インプラント手術シミュレーションソフト』を使用しているかどうかなのです(3Dで顎骨の詳細が分かります)。
CT撮影の機器があってもPC上でインプラント手術のシミュレーションが出来なければ、意味がありませんので
CT撮影の機器を持っている歯科医院であれば大丈夫とは言いきれないのです。
- インプラント治療を真面目にやっている歯科医院では、CT撮影をする。
- CT機器を持っていてもシミュレーションソフトを使わないなら意味が無い
- CTデータを解析し、インプラント診断・シミュレーションソフトを使うのかが重要!
インプラント手術シミュレーションソフト:SimPlant(シンプラント)とは?
SimPlantのメイン画面です。(インプラント手術シミュレーションソフト)
SimPlant(シンプラント)とは、インプラント治療における診査診断とインプラント手術のシミュレーションの為のソフトです。
歯科用レントゲンだけで、「インプラント手術に支障なし」と判断したが、いざ手術が始まってみたら、骨の形態や骨質が予想とは違っていたという事があります。
CTを撮らない歯科医院では、術前診断の甘さから、手術中止という事も多々あります。
水戸インプラントクリニックおおとも歯科では、Simplantを使って、十分な情報を得てから手術に望みます。
CTのデータをPCで解析し、アーティファクト(かぶせ物などの金属の影)を除去し、実物の顎をPC上に再現いたします。
SimPlant(シンプラント)ではCT撮影のデータを再構築をし、骨の断面画像や3D画像により、多角的に各種測定やインプラント埋入シミュレーションができます。
まず、顎骨の形態と骨質を解析。咬合や歯列、歯槽骨の断面画像をあらゆる方向見ながら、精密で確実な情報を把握します。
骨のみならず、顎骨の中にある神経の状況を立体的に把握し、実際のインプラント手術をPC上で再現し、審美面と機能面の両方向からの回復をシミュレーションします。
これらにより、綿密な治療計画が立案でき、術者のみならず、患者さんにとっては安心・納得した上でインプラント手術に臨むことができるのです。
当院では、インプラント手術の前に、このSimPlant(シンプラント)での治療計画立案と患者説明を行っております。
骨質把握の重要性
高性能CTで骨質を知っておくと何が良いのでしょうか?
例えば、下顎の奥歯にインプラントを入れる場合です。
下顎の奥歯相当部の骨の中には、「下歯槽神経」といわれる神経や血管が通っています。
当然、この神経を傷つけてはいけないのです。
その為に、顎骨の頂点から神経までの距離を正確に知っておく事は大切なのですが、
実は、もう一つの大切な情報が『骨質』です。
ここでは、手術の前にあらかじめ骨質を知っておくと、何が良いのかを理解できます。
昔、1990年代、長いインプラントの方が良いと言われていた時代もありましたが…
長いインプラントは、下歯槽神経を傷つけるリスクが高まります。
下顎奥歯のインプラントは、 | 長いインプラントか? | 少し短いインプラントが良いか? |
安全性が第一ですが、もう一つ、大切なのはインプラントの長さでなく、
そのインプラントが、いかに骨質の良い骨に支持されているかという事なのです。
では、どの長さが良いのか?一概には言えません。それは、その人によって、その顎の状態によって変わるからです。
CTを撮影し、SimPlantで解析すれば、それが分かります。
SimPlantで顎骨の断面画像を精査すれば、顎骨のサイズや骨質から判断できます。
たまごの様な白い部分は、インプラントを入れたい部分の顎骨の断面画像です。 顎の中を通る神経の断面がオレンジ色に映っています。 |
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15mmの長いインプラントの インプラントの下の部分は、ギリギリ神経を傷つけてはいません。 果たして、こんな危険な手術をこなす歯科医師が、偉いのでしょうか? |
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10mmの短いインプラントの インプラントの下の部分は、神経と十分な距離があります。 さらに奥まで入りそうですが・・・ よく調べてみましょう! |
インプラントの適切な長さを決める為に、骨質(HU値)を調べてみましょう。
(HU値は、骨の硬さ(骨質)の診断に使われます。)
ここでは、画像中の“Mean”という数字を見て下さい。それがHU値です。
“Mean”(HU値 )が大きいところにインプラントが埋まれば、インプラントは、より安定するとお考え下さい。
顎骨の断面画像の左側、黄色い〇に囲まれた部分の骨の硬さ(HU値)は、1828です。 1000HUを超える骨は、非常に硬い骨です。 さて次に、この下のSimPlant画像では、インプラントを埋めたい部分の骨を見てみます。 ↓ |
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インプラントのを埋める為のドリルを最初に当てる部分です。 806HUという値です。 これで、ドリル使用時の感触はホワイトパイン材程度、硬さは、10段階評価で6の骨強度で、インプラントを埋める骨としては合格です。 分類上D2とD3の境界で、皮質骨と骨梁の粗な海綿骨が歯槽頂に厚い層を形成している状態という事がわかります。 |
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ここは、もし15mmのインプラントを埋めるとしたら、インプラントの先端がくるところです。 80HUという数字は、もはや骨とは呼べないほどの柔らかさです。 150HU以下の骨は、インプラントを支える骨には適さないとされています。 大部分が骨梁の細い海綿骨で、ドリル使用時の感触は発砲スチロールです 。 この下の、肉組織のHU値と比べて、それと同等ということからもその柔らかさは分かりますよね。 |
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これは、骨の外の肉(筋肉付近)のHU値です。 50HUです。 ちなみに“水”のHU値は0HU(ゼロ)です。 脂肪組織は、マイナスの値になります。 |
大切なのは、インプラントの長さでなく、
そのインプラントが、いかに骨質の良い骨に支持されているかという事なのです。
CT撮影し、SimPlantという画像診断ソフトで診査、診断し、
インプラント手術シミュレーションをしてから、それを踏まえた上で、実際の手術を行ったほうが良いという事が理解できたでしょうか?
さらに、インプラント周囲の骨の硬さもシミュレーションすると・・・
ドリルが何ミリの深さまで抵抗がある事や急に抵抗がなくなる事等が分かります。
短いインプラントの場合の骨の方さの状態です。
インプラント周囲の骨の硬さの平均は、691HUです。
短いインプラント(10mm)の場合は、ちょうど10mm付近で急に抵抗が無くなる事が、あらかじめ分かります。
術前にこの情報があるので、
ドリルを8mm程進めたところで、骨は、急に柔らかくなるので、必要以上に突き抜けないように細心の注意を払うという準備が出来ます。
事前の情報が無ければ、神経損傷のリスクもあるかも知れません。
もし、長いインプラントを入れたら・・・というシミュレーションです。
インプラント周囲の骨の硬さの平均は、614です。短いインプラントより、HU値の数字が減っています。
骨のないところに、インプラントが入っているので、平均値が下がるのです。
長ければ良いとは言えない理由が分かりましたね。
長いインプラント(15mm)の場合は、9mm付近以降は、インプラントを支える役目を持った骨が無い事が分かります。
また、抵抗の無いまま、神経に向かってドリルが進む心配があります。
つまり、リスク(危険度)はあるが、その割りに利点が無い事が分かります。
このケースでは、10mm以上の長さのインプラントを入れない方が良いという事がわかりました。
これは、CTを撮って、SimPlantでインプラント診断をしたから
こそ分かる情報なのです。
歯科用レントゲンでは、分からない情報です。
CT撮影からSimplantを使った説明までの手順
まず、残りの歯の治療を行ってからCTを撮影します。
水戸インプラントクリニックおおとも歯科では、高性能歯科用CT「オージェソリオ(AUGE SOLIO)」を院内に導入しております。
患者さんは、院内で作製したマウスピースを使いCT撮影をします。
そのデータを株式会社マテリアライズデンタルジャパンに送り、データ変換を依頼します。
変換後のデータは、水戸インプラントクリニックおおとも歯科のPCで閲覧でき、
その上で、インプラント治療の為の診査、診断、さらに患者さんへの説明を行います。